これまで中高生や大学生に英語を教えてきて常に感じていることは、大半の学生が発音に結構無頓着だということです。いわゆるカタカナ式発音やローマ字読みが定着してしまっているケースが多いということです。発音は弁論大会やプレゼンテーション・コンテスト以外は評価の対象になることがないということがあるでしょう。大半の学生はいわゆる受験英語の勉強に明け暮れ、発音の口頭テストなんかないからどうでもいいといったところでしょう。
確かに、英語はもはやイギリスやアメリカなど英語を主要言語とする国々の話者だけの所有物ではなく、第二言語として英語を使う人の人口が、母語話者4億人の3倍近くの11億人にものぼり、その11億人の人たちは、母語の影響を受けたお国訛りのある英語を話しているという事実があります。とは言え、相手に通じなければ、英語を勉強する意味がありません。やるからには、理解可能な発音とリズムを身につけておくことが大切なのです。
例えば、フランス人の英語話者は母語に大変誇りを持っているため、自分の母語は英語ではないことを誇示するためにわざわざフランス語訛りで話す人もいます。彼らは大変流暢に話すのですが、発音が聞き取れないこともあります。またフランス以外の国々の非母語話者も英語を話すとき、癖(くせ)が強くて聞き取るのに苦労することがあります。
何が言いたいかということですが、お国訛りはあってもいいですから、ストライクゾーン内の発音ができるようにしておいた方がいいということです。
私事で恐縮ですが、学生時代、日本赤十字通訳奉仕団の語学プログラムを受ける機会があり、アメリカ人講師から徹底的に発音を叩き込まれました。そのことで大学での授業で大変得をしたことがあったのです。ネイティブスピーカーの担当する英語の授業で、日赤のアメリカ人講師に教えてもらった通りに英語を発音することで、何か優等生扱いを受けるようになったことです。もちろん、私より英語のできる学生は山ほどいました。正確な発音で、正しいリズムで英語を音読したり、話したりすることで、大学の先生にはかなり英語のレベルが高いとみられ、よく当てられたり、意見を求められたりもしました。話す内容は他の学生ほど中身があったわけではありませんが、先生からいわばえこひいきしてもらえたのです。このことで中途半端な勉強もできなくなってしまい、さらに英語に打ち込まなければならない、困ったような嬉しいような状況になってしまったのです。
日本語に置き換えて考えてみましょう。外国人で一般的な話題についてきれいな発音で日本語を話す人と語彙が豊富であってもお国訛りの強い人、どちらが日本語レベルが高いと感じますか。言うまでもありませんね。
「イイ発音はあなたを救う<その2>」ではどのような練習をすればよいのかをお話します。